同じ馬産地にある競馬場ということで、札幌競馬場がアメリカ・キーンランド競馬場の名前を冠として、2006年から行われているキーンランドカップ。
サマースプリントシリーズの一戦として、夏場に行われるスプリント重賞となっています。
このレースをスプリンターズステークスへのステップレースと位置付ける陣営もいて、非常に重要な一戦となっています。
今回は、過去のキーンランドカップを振り返りつつ、2022年の同競走における馬券検討のヒントを探ります。
1:キーンランドカップの歴代勝ち馬4頭
まずは過去のキーンランドカップ勝ち馬の中から、多くの人々の印象に残る馬をご紹介します。
歴代勝ち馬①:パドトロワ
2012年の勝ち馬で、このレースをスプリンターズステークスの前哨戦として参戦した馬でした。
前年の2011年もキーンランドカップで3着に入り、続くスプリンターズステークスでも2着に入りました。
この年はG1・2着馬として、前年の雪辱を晴らすべく、その前哨戦として参戦したのです。
その前にはアイビスサマーダッシュにも勝利しており、負けられない一戦でした。
レースはハナに立ってレースを引っ張るパドトロワにダッシャーゴーゴーが並びかけ、2頭が並んでゴール板を通過し、写真判定となります。
軍配はハナ差でパドトロワに上がりました。
勝ちタイムは1分7秒6。
洋芝で時計がかかりやすい札幌競馬場の芝コースにおけるコースレコードだったのです。
速いタイムでの勝利に、北の大地でこのレースを見守ったファンは、今度こそ、という陣営の意気込みを感じることになったレースだったのです(スプリンターズステークスは8着)。
歴代勝ち馬②:ブランボヌール
2016年の勝ち馬です。
前年2015年には、函館2歳ステークスで勝利し、2013年産まれの世代で最初の重賞勝ち馬となっています。
その後、ファンタジーステークス、阪神ジュベナイルフィリーズと続けて3着に入りますが、勝ち星からは見放されていました。
1400メートル、1600メートルという距離は、ブランボヌールにとって、適した距離とは言えなかったのかもしれません。
2016年のキーンランドカップは久しぶりの1200メートル戦であり、久しぶりの北海道地区でのレースでもありました。
この距離、そして北海道の気候がピッタリの馬だったからこその勝利だったのでしょう。
ブランボヌールにとっては、復活の勝ち星でした。
歴代勝ち馬③:エポワス
前述した2012年の勝ち馬パドトロワですが、当時のコースレコードタイム1分7秒6は2015年に破られます。
この年のオープン特別でコースレコードを塗り替えたのはエポワスでした。
そのオープン特別はハンデ戦で、まだひとつ下のクラスでも出走可能だったエポワスは53キロという軽ハンデを味方に勝ち星を挙げたのです。
そのレコード勝ちを決めた時、エポワスは既に7歳でした。
セン馬ということもあり、その後も現役を続けたエポワスは、9歳となった2年後に大仕事をやってのけます。
12番人気という低評価をモノともせず、直線一気の競馬で差し切り勝ちを決めたのです。
コースレコードホルダーとしては、当然の結果だったのかもしれませんが、9歳馬ということで評価を下げていたのでした。
そして、9歳にして初めての重賞タイトル獲得となったのです。
歴代勝ち馬④:ナックビーナス
2018年の勝ち馬です。
ナックビーナスにとっては、この勝利が重賞初勝利だったのですが、手綱を取ったジョアン・モレイラ騎手も、この勝利が日本では初めての重賞勝利でした。
本拠地である香港では、既にリーディングジョッキーとなっていたジョアン・モレイラ騎手ですが、この年初めて短期免許を取得して日本の競馬に参戦していました。
その実力に驚きの声を挙げる日本のファンは少なくなかったのですが、このキーンランドカップではスタートからハナに立ち、後続を全く寄せ付けずに勝利し、日本でもタイトルを獲得してみせたのです。
ジョアン・モレイラ騎手は秋以降も日本で騎乗を続け、11月にはリスグラシューでエリザベス女王杯を勝利し、日本でもG1ジョッキーとなったのです。
キーンランドカップ当日は、ワールドオールスタージョッキーズ(WASJ)も行われ、世界の名手たちにも注目が集まります。
世界の技に触れることができる1日でもあるのです。
2:キーンランドカップの歴代勝ち馬から傾向・共通点を読み解く
続いて、近10年のキーンランドカップをデータから紐解いてみたいと思います。
傾向①前走は函館スプリントステークスかUHB賞
このレースに出走する馬は、事前に札幌か函館に滞在して、現地で追い切られる馬という、滞在競馬での参戦となります。
近10年のキーンランドカップにおいて、出走馬が前走で出走していた競馬場を調べると、前走も札幌か函館のレースに出走していた馬の成績が「6・7・5・79」なのに対し、北海道地区以外の競馬場だった馬は「4・3・4・44」となっています。
若干ですが、北海道シリーズを転戦してきた馬が有利となっています。
この前走も北海道シリーズを使われていた馬ですが、函館スプリントステークス組が3勝、UHB賞組が2勝を挙げています。
基本的には、函館スプリントステークスかUHB賞が前走だった馬を狙うべきでしょう。
傾向②乗り替わりはマイナス
夏競馬はどうしても乗り替わりが多くなってしまうのですが、近10年のキーンランドカップでは、前走と同じ騎手が騎乗したケースだと「7・5・2・55」なのに対し、前走から騎手が乗り替わっているケースでは「3・5・8・68」となっており、乗り替わりとなる馬がやや不利となっています。
夏場に北海道で騎乗する機会が少ない騎手でも、その馬の為に北海道に駆け付ける騎手の方が強いということになりそうです。
なるべく乗り替わりがない馬を中心視したいところです。
傾向③斤量が軽い馬に注意
続いて、斤量別の成績をチェックしておきましょう。
近10年のキーンランドカップでは、斤量が55kg以下の馬が「7・7・6・57」なのに対し、56kg以上の馬が「3・3・4・66」となっており、55kg以下の馬が有利となっています。
特にブランボヌール(2016年)、レイハリア(2021年)と、51kgで出走した3歳牝馬の活躍が目立っています。
軽量の3歳牝馬は今後も要注意だと言わざるを得ません。
3:キーンランドカップの歴代勝利騎手
続いて、近10年のキーンランドカップを騎手という視点でもう少し掘り下げたいのですが、近10年で2勝以上を挙げている騎手はいません。
そこで、近10年の勝利騎手から注目すべき騎手をご紹介します。
歴代勝利騎手①:クリストフ・ルメール騎手
前述した2017年の優勝馬エポワスの手綱を取っていたのは、クリストフ・ルメール騎手でした。
当時、エポワスは単勝オッズ21.2倍で12番人気でした。
重賞で二桁人気の馬に乗るクリストフ・ルメール騎手というのは、あまり想像できないという人も多いでしょう。
こうした馬でも勝たせてしまうからこそ、彼は名手と言えるのです。
歴代勝利騎手②:川田将雅騎手
キーンランドカップ当日、川田将雅騎手はワールドオールスタージョッキーズ(WASJ)のJRA代表騎手として、札幌競馬場に参戦します。
九州出身で、夏場は小倉競馬場で騎乗することの多い川田将雅騎手ですが、この日は札幌で騎乗することが確定しています。
キーンランドカップ出走予定馬の陣営としては、何とか乗って欲しい騎手のひとりではないでしょうか?
どの馬に騎乗するのか、興味深いところです。
ちなみに、ダノンスマッシュで2019年のキーンランドカップを勝利しています。
キーンランドカップ歴代のまとめ
繰り返しになりますが、WASJ当日に行われる重賞競走ですので、騎手に注目したくなるレースです。
一方で、乗り替わりがマイナスとなりかねないというデータもあり、その兼ね合いをどう考えるべきかが、馬券検討のポイントとなるレースでもあります。
時期的に、次走はスプリンターズステークスという馬も出走するレースでもあります。
その結果から決して目を離してはいけないレースなのです。