2022年マイルチャンピオンシップ展開予想〜騎手の力量がモノを言う一戦〜

阪神競馬場の直線を猛然と追い込み、管理する藤沢和雄調教師と共に有終の美を飾ったグランアレグリアの姿が未だに記憶に残っている、という競馬ファンは少なくないでしょう。

そのグランアレグリアのラストランから1年が経過しました。

マイル戦線はニューヒーロー、ニューヒロインの誕生が期待されています。

今回はその注目のマイルチャンピオンシップを主に展開という視点で紐解いてみたいと思います。

１：2022年マイルチャンピオンシップにおけるレース展開の3つのポイント

まず、マイルチャンピオンシップの展開予想をする上で、押さえておくべきポイントをご紹介します。

ポイント①：2022年も舞台は阪神競馬場

本来、マイルチャンピオンシップは京都競馬場の芝1,600m戦で争われているレースです。

しかし現在、京都競馬場は改装工事中の為、2020年と2021年は阪神競馬場での実施となりました。

2022年も阪神競馬場が舞台となります。

展開予想をする際は、京都と阪神の相違点も踏まえた予想をする必要があります。

ポイント②：近10年は逃げ・先行馬が苦戦する傾向に

まずは京都と阪神の違いとは無関係に、近10年のマイルチャンピオンシップにおける、脚質別成績をチェックしておきましょう。

逃げ	1・0・0・9
先行	0・2・4・28
差し	7・8・5・64
追い込み	2・0・1・44

2016年にミッキーアイルが逃げ切り勝ちを決めていますが、近10年のマイルチャンピオンシップで逃げ馬が馬券圏内に入ったのはこの一度だけです。

逃げ馬を直後でマークする先行馬も、近10年では勝ち星を挙げていません。

馬群の中団よりも後ろからレースを進める、差し・追い込み馬が有利なレースと言えそうです。

ポイント③：阪神のマイル戦も逃げ馬は不利

続いて、2022年に行われた阪神の芝1,600m戦のデータから、脚質別成績をチェックしてみましょう。

阪神のマイル戦は下級条件も含めると、比較的レース数が多く、2022年は10月末までに42レース組まれています。

逃げ	2・4・2・34
先行	16・19・21・104
差し	19・14・15・152
追い込み	5・4・4・152
マクリ	0・1・0・1

この42レースの中には、スピードの絶対値がモノを言う新馬戦や未勝利戦も含まれているのですが、こうした下級条件のレースを含めても、逃げ切り勝ちを決めた馬が2頭しかいない、と言うのは驚くべきデータだと思われます。

マイルチャンピオンシップというレースも、2022年の舞台となる阪神競馬場のコースも、逃げ馬にはかなり不利と言わざるを得ないようです。

２：マイルチャンピオンシップ2022の展開予想

次に、この記事を書いている11/1時点で、前哨戦の結果や各メディアの報道を元に、2022年のマイルチャンピオンシップへの出走が見込まれている馬をご紹介します。

出走予定馬	騎乗予定騎手
ウインカーネリアン	三浦皇成
サリオス	R.ムーア
ジャスティンカフェ	福永祐一
シュネルマイスター	未定
セリフォス	D.レーン
ソウルラッシュ	松山弘平
ソダシ	未定
ダノンザキッド	北村友一
ダノンスコーピオン	川田将雅
ファルコニア	未定

現時点で出走が見込まれているのは、上記の10頭です。

フルゲートは18頭ですので、出走予定馬は更に増えると思われますが、ひとまず上記の10頭で展開予想を試みたいと思います。

２－１：マイルチャンピオンシップ2022で先手を取れる馬

上記の10頭に、「何が何でもハナに立ちたい」という馬は1頭もいません。

逃げる馬は、スローペースを意識して騎手が奇策に出た結果か、あるいは牽制し合う中で押し出されるように先頭に立ってしまうか、のいずれかではないでしょうか。

レース自体も、コースも、逃げ馬には厳しい条件ですので、「先手を取る」というより、「先手を取らされる」という表現の方が正しいかもしれません。

逃げる可能性があるとすれば、ウインカーネリアン、ソダシ、ファルコニアのいずれかでしょう。

しかし、この3頭の陣営は「逃げる競馬をしたくない」と思っている可能性があります。

この3頭以外に、奇策として逃げの手に出る可能性に注意したいところです。

特に、乗り替わりの外国人騎手は積極的なレースぶりを見せる可能性がありますので、警戒したいところです。

２－２：マイルチャンピオンシップ2022で注目の差し馬

前哨戦の勝ち馬の中に、注目したい差し馬が2頭います。

まずは前年の2021年は6着に敗れていたサリオスです。

当時は安田記念から休養明けで挑んでの結果でした。

しかし、2022年は毎日王冠をレコード勝ちしてから挑むマイルチャンピオンシップになります。

その毎日王冠のレースぶりですが、逃げ・先行馬の直後からゴール手前だけ一瞬の決め手で突き抜ける形での勝利でした。

G1馬らしい、抜群の決め手を持つ馬であることを多くの人が再認識したレースぶりは、マイルチャンピオンシップでも要注意です。

もう1頭、3歳馬セリフォスにも注意が必要です。

前走の富士ステークスでの勝利は、前年2021年の新潟2歳ステークス、デイリー杯2歳ステークスに続く、3つ目の重賞タイトル獲得でした。

2021年の朝日杯フューチュリティステークスで2着、2022年のNHKマイルカップで4着、安田記念で4着という実力馬でもあります。

3歳馬であるが故に、その成長力には要警戒ではないでしょうか。

軽視できない差し馬の1頭と言えそうです。

３：マイルチャンピオンシップ2022のペース分析

逃げ馬不在であり、逃げ馬に不利なレースであり、逃げ馬に不利なコースでもあります。

基本的にはスローペースとなる可能性が高いでしょう。

但し、スローペースが見込まれるレースであるが故に、奇策に打って出る陣営の存在に警戒が必要となります。

その奇策とは、思い切った逃げの手、ということになります。

この戦法を取る人馬が1頭しかいなければ、レースやコースの傾向に反して展開に恵まれる可能性もあるのですが、同じことを考えている人馬が複数存在する場合は、意外に速い流れとなる可能性も秘めています。

それぞれの陣営が、そして騎手がどのような作戦を立てるのか？によって、レースの流れは大きく変わると考えていいでしょう。

2022年マイルチャンピオンシップの展開予想まとめ

逃げ馬不在のレースは、騎手同士の駆け引きが展開やレース結果を大きく左右します。

普段よりも騎手の力量や性格を分析する必要があります。

短期免許で来日する外国人騎手が多くなる時期でもあり、こうした外国人騎手への乗り替わりにも注意が必要です。

乗り替わりで騎乗する騎手は、前に乗っていた騎手からその馬についての情報を得ながらも、前走とは違う戦法でレースに挑もう、と企みたくなるものです。

特に外国人騎手は馬やコースへの先入観がない分だけ、これまで騎乗していた騎手たちが気づいていなかった持ち味を引き出すことに成功する可能性が高いです。

これも競馬という競技の面白さであり、醍醐味でもあるのですが、一方で馬券を買ってレースを見るファンにとっては、非常に悩ましいポイントであると言っていいでしょう。

逃げ馬不在の2022年マイルチャンピオンシップは、例年よりも騎手というファクターが占める比重が馬券検討をする上で非常に高いG1レースと言えそうです。

特に注意が必要なのは乗り替わりで、外国人騎手への乗り替わりはさらに要警戒と言えそうです。