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京都競馬場の芝3,200メートル戦。
「春天」などとも呼ばれ、多くの競馬ファンに親しまれてきた天皇賞(春)は、国内で行われるG1レースの中で、最も長い距離で争われるレースです。
長距離戦である点と、京都競馬場特有の3コーナーにおける坂が、様々な駆け引きを産み出し、多くの名勝負を演出してきました。
世界的には、短距離戦向きのスピード競馬が高く評価されるようになっていますが、それでもこの伝統の長距離G1が色褪せることはありません。
そんな天皇賞(春)における過去を振り返ります。
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Contents
1:【天皇賞(春)】過去の伝説の名勝負
名勝負の多い天皇賞(春)ですが、ここでは中・長距離戦線の勢力図が変わるきっかけとなった名勝負をご紹介しましょう。
絶対王者が敗れる日は、必ずやってくるものなのです
1993年優勝馬ライスシャワー世代交代
単勝オッズ1.6倍。
もちろん、1番人気でした。
多くのファンは、このレース3連覇を狙うメジロマックイーンを絶対的な存在として見ていました。
前走の大阪杯(当時はG2)を快勝し、臨戦過程も万全で、メジロマックイーンに死角はない、と誰もが思っていたのです。
しかし、意外なところにその死角がありました。
後に振り返ると、本当は意外でも何でもない話だったのです。
最後の直線で、6歳馬メジロマックイーンは先頭に立ちますが、その外から4歳馬ライスシャワーが並びかけます。
勢いはライスシャワーの方が上でした。
あっさりとライスシャワーに先頭を譲ることになったメジロマックイーンは、巻き返すことができず、そのまま2馬身1/2差をつけられ、2着に敗れたのです。
3連覇の夢が敗れたメジロマックイーンは6歳。
3連覇を阻んだライスシャワーは4歳。
ライスシャワーもメジロマックイーンと同様に、前年の菊花賞を勝っている馬です。
中・長距離戦線における世代交代の瞬間でした。
ライスシャワーはあまり体の大きな馬ではありません。
小柄なライスシャワーが、前走の日経賞から12キロも馬体重を絞り込み、430キロでこの天皇賞(春)に挑んでいました。
ライスシャワー陣営は世代交代を果たすべく、メジロマックイーンに全力で挑んでいたことが、この日の馬体重からも理解できます。
壮絶な戦いの末に掴んだタイトルだったのです。
1996年優勝馬サクラローレル~第3の馬
G1の前哨戦に相当するG2・G3戦が競馬史に残る名勝負となることはよくあります。
この年の天皇賞(春)においても、前哨戦でそんな名勝負がありました。
それは3月に行われた阪神大賞典でのことでした。
前年の菊花賞と有馬記念を制したマヤノトップガンに、2年前の3冠馬ナリタブライアンが3コーナー過ぎに並びかけます。
2頭は併せ馬のように馬体を並べたまま、4コーナーから最後の直線に入っても叩き合いを続けます。
そして全く並んでゴール板を通過。
この2頭のスターホースが見せた激しい戦いに、阪神競馬場は土曜日に行われたG2戦とは思えないほどの大歓声に包まれました。
写真判定の結果、軍配はハナ差でナリタブライアンに上がります。
名勝負ではありましたが、この阪神大賞典はあくまで前哨戦です。
本番は、この次の天皇賞(春)なのです。
その天皇賞(春)を前に、マヤノトップガンの手綱を取る田原成貴元騎手はこんなコメントでナリタブライアン陣営を挑発します。
「阪神大賞典は(プロ野球で言えば)オープン戦だから、今回は違う」
勝負の世界で生きる騎手として、簡単に負けを認めることはできないが故の発言でした。
レース前にそんな舌戦があったこの年の天皇賞(春)ですが、勝者はナリタブライアンでも、マヤノトップガンでもありませんでした。
最後の直線で脚色が鈍ったマヤノトップガンをナリタブライアンが交わします。
ところがそのナリタブライアンの外から、阪神大賞典には出走していなかったサクラローレルが迫ってきたのです。
結果は、サクラローレルがナリタブライアンに2馬身1/2差をつけて勝利。
阪神大賞典の名勝負があった為に、2強対決という雰囲気だったのですが、結果はこの2頭ではなく、3番人気だったサクラローレルが勝者となったのでした。
この3頭の単勝オッズを確認してみましょう。
- ナリタブライアン(1番人気、1.7倍、2着)
- マヤノトップガン(2番人気、2.8倍、5着)
- サクラローレル(3番人気、14.5倍、1着)
注目度という視点から見ると、2強から大きく離された第3の馬による勝利だったことがわかります。
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2:過去に波乱となった天皇賞(春)
現在の競馬界は国内外を問わず、天皇賞(春)のようなスタミナが求められるレースよりも、短距離戦で必要とされるスピードを要求されるレースの方が価値が高くなっています。
その為、長距離戦への適性が高い馬が少なくなり、長距離戦で波乱となるレースが増えています。
天皇賞(春)も例外ではありません。
過去の天皇賞(春)から、波乱となったレースも振り返りましょう。
あれはまぐれではない2003年ヒシミラクル
以前の天皇賞(春)なら、前年の菊花賞は確実に上位人気となっていました。
しかし、この年の勝ち馬で、前年の菊花賞馬ヒシミラクルは、単勝オッズ16.1倍で7番人気という、全くの低評価でした。
ヒシミラクルの評価が低かった大きな原因は、菊花賞後の戦績にありました。
- 有馬記念11着
- 阪神大賞典12着
- 大阪杯7着
確かに、前年の菊花賞馬だと言われても、手を出しにくい戦績でした。
さらにその菊花賞は、1番人気だった皐月賞馬ノーリーズンがスタート直後に落馬・競走中止となるというアクシデントがあったレースでした。
ヒシミラクルの菊花賞勝利は、全くのフロックだと思われていたのです。
そんな低評価を覆して勝利したヒシミラクルを見た多くの競馬ファンは、菊花賞馬の存在を軽視していた点を反省せざるを得ませんでした。
そのヒシミラクルは、次走の宝塚記念でも勝利し、G1連勝を飾ります。
あの菊花賞勝利は、決してフロックではなかったのです。
G1初挑戦で優勝2009年マイネルキッツ
ヒシミラクルは、多くの人がその実力を見落としていたが故の波乱だったのですが、この年の勝ち馬マイネルキッツに関しては、見落とされても仕方がない一面がありました。
マイネルキッツはオープン入り後、2008年の七夕賞で3着、新潟記念で2着、福島記念で3着という戦績を残しています。
さらに、天皇賞(春)の前哨戦として出走した日経賞でも2着に入っています。
オープンクラスで馬券圏内に入っていますが、まだ勝ち星はありませんでした。
G2・G3でも勝ち星がない馬で、おまけにG1出走もこの天皇賞(春)が初めてだったのです。
重賞タイトルに縁がなく、G1で走ったことがない馬がいきなり天皇賞(春)を勝ってしまったのです。
単勝オッズは46.5倍で12番人気という馬の勝利に、京都競馬場内はため息で包まれました。
しかしこのマイネルキッツの勝利も、フロックとは言えません。
マイネルキッツは翌2010年の日経賞で重賞2勝目を挙げ、天皇賞(春)でも2着に入ります。
また、2011年にはステイヤーズステークスを勝って、重賞3勝目をマーク。
G1を勝つ実力の持ち主であることをしっかりと証明したのです。
ステイヤーズステークスを勝った時、マイネルキッツは8歳でした。
天皇賞(春)優勝時は6歳です。
このマイネルキッツは、晩成型の馬だったのです。
本格化したタイミングとG1初出走・初勝利が重なった結果が、波乱の決着となったのでした。
3:天皇賞(春)の過去から見る傾向とは
1990年代まで、天皇賞(春)は波乱になる可能性が低く、本命サイドで決着するレースでした。
しかし、2000年代になって、二桁人気の馬が勝利するなど、波乱の決着が見られるようになりました。
そして近年はまた少し傾向が変わりつつあります。
そんな天皇賞(春)の傾向を紐解いてみましょう。
近年は波乱とは言えず
前述したヒシミラクルが優勝した2003年や、マイネルキッツが勝った2009年の他にも、
- イングランディーレ(2004年・10番人気)
- スズカマンボ(2005年・13番人気)
- ヒルノダムール(2011年・7番人気)
- ビートブラック(2012年・14番人気)
など、人気薄の馬が勝利するケースが、2000年代以降の天皇賞(春)では相次ぎました。
しかし2015年以降は、
- ゴールドシップ(2015年・2番人気)
- キタサンブラック(2016年・2番人気、2017年・1番人気)
- レインボーライン(2018年・3番人気)
- フィエールマン(2019年、2020年共に1番人気)
- ワールドプレミア(2021年・3番人気)
などと、上位人気馬が順当に勝利を挙げています。
近年は、「波乱になりやすいG1」とは言えなくなりました。
人気馬の実績を素直に信頼すべきレースに戻りつつあるのです。
連覇する馬の共通点
過去の天皇賞(春)において連覇を達成した馬は、
- メジロマックイーン(1991年・1992年)
- テイエムオペラオー(2000年・2001年)
- フェノーメノ(2013年・2014年)
- キタサンブラック(2016年・2017年)
- フィエールマン(2019年・2020年)
の5頭です。
この5頭には、ある共通点があります。
いずれも、4歳と5歳の時に天皇賞(春)を制しているのです。
3連覇を目指したメジロマックイーンがライスシャワーに敗れた時、メジロマックイーンは6歳でした。
天皇賞(春)に前年の覇者が連覇を目指して出走するケースで、勝ち星を挙げて連覇を達成するのは、5歳時の時のみです。
果たして今後、この傾向を覆す馬は出現するでしょうか?
天皇賞(春)過去のまとめ
大阪杯がG1となり、天皇賞(春)の前哨戦でなくなった時、長距離戦線がますます手薄になってしまうのではないか、という声が一部でありました。
しかし、人気馬が順当に勝利する近年の傾向を見る限り、こうした心配は杞憂であったことがわかります。
今後も天皇賞(春)は、地力のあるステイヤーたちによる戦いが続くのです。
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