中央競馬の一年を締めくくるレースとして開催されている有馬記念では、これまでも数々の名勝負が行われてきました。
有馬記念にはその年を代表する実績馬が集まり、中央競馬の頂上決戦とも言えるレースです。
今回は幾多の好レース、名勝負が繰り広げられてきたグランプリ・有馬記念の中でも、特に競馬ファンの記憶に残っている名勝負をピックアップして紹介します。
有馬記念の名勝負は心が熱くなるものばかりなので、是非最後まで本記事を読んで、競馬の魅力を体感してくださいね。
1:記憶に残る有馬記念の名勝負:大接戦編
有馬記念の名勝負は紹介しきれないほどたくさんありますが、その中でもまずはゴール前で大接戦になった名勝負を紹介します。
1-1:1999年有馬記念(グラスワンダーvsスペシャルウィーク)
競馬ファンが最も心を揺さぶられるのは、強い馬同士のライバル対決です。
1999年の有馬記念では、グラスワンダー、スペシャルウィークという2頭のスターホースが激突しました。
前年の有馬記念を優勝したグラスワンダーは、この年の宝塚記念も制し、グランプリ3連覇をかけて臨みます。
対するスペシャルウィークは、天皇賞の春秋連覇を成し遂げ、前走のジャパンカップを優勝していました。
有馬記念のファン投票では、スペシャルウィークがグラスワンダーを抑えて1位。
しかし、当日の単勝人気は、グラスワンダーが1番人気で、スペシャルウィークが2番人気となりました。
レースがスタートすると、スペシャルウィークは最後方に控え、後方10~11番手にいたグラスワンダーをマークする展開となります。
最後の直線ではグラスワンダーとスペシャルウィークが共に外から追い上げ、グラスワンダーとスペシャルウィークがほぼ並んだ状態でゴール板を駆け抜けました。
体勢はわずかにスペシャルウィークが有利かと思われましたが、勝ったのはグラスワンダー。
その差はなんと、わずか4cmです。
ちなみに、勢いはスペシャルウィークに分があったため、武豊騎手が負けていたにもかかわらずウイニングランを行うという珍事も起こりました。
経験豊富な名騎手が勘違いをしてしまうほどの大接戦であり、どちらが勝ってもおかしくなかったレースです。
フジテレビアナウンサーの堺正幸氏の「やっぱり最後は2頭だった」という実況は、最強馬2頭による名勝負だったことを物語っています。
現役最強の名をかけて対決したグラスワンダーとスペシャルウィーク。
最後は2頭のワンツーフィニッシュとなり、年末の大一番である有馬記念に相応しい名勝負となりました。
1-2:2000年有馬記念(テイエムオペラオーvsメイショウドトウ)
続いて紹介するのは、2000年の第45回有馬記念。
このレースの注目馬は、テイエムオペラオーとメイショウドトウでした。
古馬中長距離G1競走完全制覇をかけて有馬記念へ出走したテイエムオペラオー。
「果たして、テイエムオペラオーを倒せる馬がいるのか?」
それが、当時の競馬ファンの心境であり、有馬記念での注目ポイントでした。
レースが始まると、テイエムオペラオーへのマークが集中し、進路が塞がれてしまいます。
最後の直線を迎えたときには絶体絶命の位置にいたテイエムオペラオーでしたが、馬群をこじ開けて上位へ迫り、ゴール前でメイショウドトウをハナ差捉えて辛くも勝利しました。
このレースを間近で観戦していたテイエムオペラオーの竹園オーナーは、「馬も騎手も、涙が出るくらい可哀想でした」とコメントしています。
着差はハナ差とわずかでしたが、まさに圧勝と言えるような内容で実力の違いを見せつけた結果となりました。
2:記憶に残る有馬記念の名勝負:三強対決編
日本競馬においては強い馬が3頭集まったレースで、三強対決として注目を集めることが多くあります。
有馬記念においても様々な三強対決があり、いくつもの名勝負が繰り広げられてきたので、ここでは記憶に残る有馬記念の三強対決の名勝負を紹介します。
2-1:1977年有馬記念(TTG)
三強対決の中でも代表的な存在と言えるのは、トウショウボーイ・テンポイント・グリーングラスです。
それぞれのイニシャルからTTGと名付けられ、3頭の名勝負には多くの競馬ファンが魅了されました。
そんなTTGの最後の戦いとなったのが、1977年に行われた有馬記念です。
テンポイントは春の天皇賞を制し6戦5勝2着1回と安定した強さを見せ、トウショウボーイは宝塚記念でテンポイントを抑えて勝利していました。
そして、前年の菊花賞の勝ち馬・グリーングラスもトウショウボーイ、テンポイントに迫る存在として注目されていました。
レースはスタートからトウショウボーイが逃げる展開となり、テンポイントがすぐさまトウショウボーイを追いかけます。
マッチレースのような様相となりますが、最後の直線では2頭をピッタリとマークしていたグリーングラスが迫り三強の激戦に。
最終的にはテンポイントがトウショウボーイ、グリーングラスの猛追を抑えて勝利しました。
1着テンポイント、2着トウショウボーイ、3着グリーングラスという結果になりましたが、驚きなのは3着から4着まで6馬身もの差が開いていたことです。
このことからも、TTG三頭の力がずば抜けていたことがわかり、今でも中央競馬史上屈指の名勝負の一つに数えられています。
2-2:1984年有馬記念(シンボリルドルフ・ミスターシービー・カツラギエース)
1984年に行われた第29回有馬記念でも、三強対決が話題になりました。
このレースには無敗で三冠馬となったシンボリルドルフ、前年に19年ぶりの三冠馬となったミスターシービー、さらに日本馬として初めてジャパンカップを制したカツラギエースが出走していました。
単勝人気はシンボリルドルフが1番人気、ミスターシービーが2番人気、カツラギエースが3番人気という状況です。
レースがスタートすると、カツラギエースがジャパンカップ同様に逃げに打って出ます。
シンボリルドルフはカツラギエースをマークする形となり、最後の直線では逃げるカツラギエースをシンボリルドルフが捉え1着でゴール板を駆け抜けました。
2着には逃げ粘ったカツラギエースが入り、ミスターシービーは馬ごみから抜け出して追い込むものの3着に終わりました。
3頭はいずれも日本競馬史上に名を残す名馬であり、どの馬が勝ってもおかしくないほどの実力を持っていました。
そんな3頭が激突した名勝負として、記憶にも記録にも残る有馬記念です。
3:有馬記念での最大着差
有馬記念はハイレベルなメンバーが揃うビッグレースですが、その中でも実力が飛び抜けた馬が圧勝し驚かされることがあります。
そこで、過去の有馬記念での最大着差について調べてみたところ、ベスト3は以下のとおりとなっていました。
2.オルフェーヴル 8馬身(2013年)
3.カブトシロー 6馬身(1967年)
有馬記念で最も着差がついたのは、2003年の第48回有馬記念で、勝ったのはシンボリクリスエスでした。
2着のリンカーンに有馬記念史上最大の9馬身差をつけ、1991年にダイユウサクが記録したレコードを更新しています。
騎乗してたペリエ騎手はレース後に「自分が今まで乗った中で、パントレセレブルに匹敵するくらいのベストホースだと思います」と絶賛しました。
他馬を全く寄せ付けない圧勝劇で、同日に引退式が行われましたが、引退するのがもったいないと感じるほどの衝撃的な走りでした。
さらに、有馬記念史上2番目に着差がついていたのは、オルフェーヴルが勝った2013年の第58回有馬記念です。
このレースでは三冠馬オルフェーヴルが8馬身差をつけ圧勝し、有終の美を飾りました。
ウインバリアシオン、ゴールドシップ、ラブリーデイ、トーセンジョーダンなどハイレベルなメンバーが揃った中での圧勝劇。
オルフェーヴルが日本競馬史上、類を見ないほどの絶対的な名馬だったことがわかります。
競馬はゴール前の接戦も面白いですが、他を寄せ付けない圧勝劇が見られるのも魅力です。
2021年の有馬記念では接戦となり名勝負となるのか、はたまた1頭の馬が他馬に差をつけて圧勝するのか、どんなレースになるのか注目です。